犬猫の血尿と血色素尿のちがいは?|現場で迷わないための見分け方と関連疾患

犬や猫の尿が赤く見えるとき、「血尿なのか、それとも血色素尿なのか…」と迷った経験はありませんか?
「そもそも血色素尿ってなんだっけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 
私もそうでした…(^_^;)

パッと見ただけでは見分けがつきにくいですが、検査や治療の判断に直結する大切なポイントです。

この記事では 血尿と血色素尿のちがい を整理しながら、関連する疾患や注意すべき検査ポイントをわかりやすくまとめました。
さらに、臨床で稀に遭遇することのある ミオグロビン尿 にも触れていきます。

そらうみ

「尿が赤い=血尿」と短絡的に考えがちですが、正しく理解しておくことで、診断精度の向上や飼い主さんへの説明にもつながりますよ☝️

目次

血尿と血色素尿のちがい

結論から言うと、血尿と血色素尿のちがいは尿中に赤血球そのものが出ているか赤血球の色素のみ(ヘモグロビン)が出ているかのちがいです。

”血尿”は、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかで出血があり、
血液がそのまま尿と一緒に出てきているので鏡検すると赤血球が見えます。

”血色素尿”は、自己免疫疾患・感染症・中毒などによって赤血球が破壊され、
赤血球の色素であるヘモグロビンが尿中に溶け出して赤くなっているので、鏡検しても赤血球は見えません。

また、同じように赤褐色に見える尿で「ミオグロビン尿」というものもあります。

ミオグロビンとは筋肉の中にあるタンパク質で、筋肉の細胞内で酸素を運搬する役割を担っています。

過度な運動、発作、重度の外傷、熱中症などによって筋肉が壊れたり炎症を起こすことでミオグロビンが尿中に排出された状態を”ミオグロビン尿”と呼びます。

それぞれについて詳しく解説していきます。

血尿とは

血尿とは、尿の中に血液が混じっている状態のことを指します。

当たり前と思われるかもしれませんが、色素だけではなく「血液そのもの」が混じっているというのがポイント。
つまり、冒頭でも書いた通り尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかで出血しているということになります。

動物病院で一番多く見られるのは、膀胱炎で膀胱壁の炎症がひどくそこから出血しているパターンや、尿路結石によって膀胱や尿道などが傷つけられて出血しているパターンではないでしょうか。
他にも膀胱の腫瘍から出血していたり、犬だと前立腺疾患によって血尿が出ることもあります。

血液がそのまま混じっているので、尿を顕微鏡で見てみると赤血球がはっきり見えるのも血色素尿との大きなちがいです。
尿の色は真っ赤だったりピンクっぽかったり、少し茶褐色のような色で、不純物が混ざって濁っている場合もあります。

血色素尿(ヘモグロビン尿)とは

血色素尿とは、赤血球が壊されてヘモグロビンが漏れ出ている状態。
文字通り「血の色素の色の尿」なので、色素の色で赤く見えてますよ〜ってことですね。

尿の色は濃赤色〜赤褐色で、濁っておらず透明なことが多いです。
血色素尿が出る原因として多いのは、玉ねぎ中毒バベシア症ヘモプラズマ感染症免疫介在性溶血性貧血(IMHA)など。

”血尿”の場合は、尿を遠心分離すると上清は透明になり沈渣には赤血球が見られます。
しかし”血色素尿”の場合は溶血しているので遠心分離をしても上清は赤いままで、沈渣に赤血球は確認されません。

また、血液検査をすると貧血や血色素血症を伴っていることが多いです。

血尿とも血色素尿ともちがう赤いおしっこ…

血尿でも血色素尿でもないけど尿が赤くなることがあります。
それが「筋色素尿(ミオグロビン尿)」と呼ばれるもの。(以下、ミオグロビン尿と呼ぶ)

ミオグロビン尿は、筋肉の破壊によって筋肉の色素が尿中に排泄されている状態で、
激しい運動痙攣・外傷による筋損傷・横紋筋融解症などが原因で見られることがあります。

色は血色素尿と似ていて、こちらも濃赤色〜赤褐色。
遠心分離後も血色素尿と同じく上清は赤いまま、沈渣に赤血球は確認されません。
また、筋肉が障害を受けている状態なので血液検査をするとCK(筋肉の酵素)が高値を示します。

そらうみ

うちの先生が言うには、「スーパーで買ったパックのお肉から出てる汁の色」みたいな感じですって。

ちなみに、ミオグロビン尿によって急性腎不全になってしまう場合があります。
これは、ミオグロビンが腎毒性を持っていることと、尿細管内でミオグロビンが凝集を起こし閉塞性腎障害を引き起こすためです。

まとめ

血尿と血色素尿、ミオグロビン尿のちがいについてなんとなーくでも伝わったでしょうか?

ざっくり言うと「血液そのものが混じっているのか、そうじゃないのか」ってことです(笑)

色素だけが混じっている尿にも、血色素と筋色素の2種類があることをおさえられていればひとまずOK👌

それぞれの症状によって疑われる病気は異なるので、そこも理解したうえで赤いおしっこと対面できるとより考察も広がるかもしれませんね(^^)

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この記事を書いた人

企業病院勤務7年半、夜間救急経験。
現在は夜間病院、訪問診療、保護猫施設併設病院にて勤務🏥
動物看護師は素敵な仕事だけど、激務、安月給、人間関係のいざこざなど悩みが絶えず、どれだけ素晴らしい仕事か知らないまま辞めてしまう人が多い。。
動物看護師がより働きやすく、自分の仕事に誇りややりがいを持ってもらえるように、なにか手助けとなる記事を書いていきたいと思っています。

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