先日、2年目の後輩看護師くんから素朴な疑問をいただきました。
顕微鏡に映るミミヒゼンダニを見て、、
「こいつらって、なにしてるんですか?」
…なんだろうかそのピュアな視点は…!?(´゚д゚`)
私はそんなこと考えたこともなかったよ…。
というわけで、今回は以下の点に絞ってミミヒゼンダニについて勉強していきたいと思います。
ミミヒゼンダニの生態
ミミヒゼンダニという名前ですから、ダニの仲間だということはなんとなくわかると思います(^^)
とはいえ、家の中にいるチリダニ類や皮膚に咬み付いて吸血するマダニとは違い、寄生すると特徴的な症状を引き起こします。
耳を痒がっているわんちゃんやねこちゃんが来院された際には、ミミヒゼンダニの症状に気付けるようにその特徴についてしっかりと頭に入れておきましょう。
ミミヒゼンダニは、「耳ダニ」「耳疥癬」とも呼ばれ、0.3〜0.5mm程度の大きさで肉眼では見えません。
よーーーく目を凝らすと肉眼でも見えるかも?
ミミヒゼンダニは皮膚の表面で生活し、耳垢や分泌物を食べます。
皮膚の表面をかじり血液などを摂取するためアレルギー性過敏反応が引き起こされ、それによって強いかゆみが出ます。
卵は4日ほどで孵化し、皮膚や外耳道の表面で発育します。
卵は3週間ほどで成虫になり、成ダニは約2ヶ月生存します。
ミミヒゼンダニの駆虫薬では卵までは駆除できないので、成ダニになってから再度駆虫を行います。
犬・猫・キツネ・フェレットなどに寄生し、人間にもうつることがありますが繁殖ができないので、人間への影響は一時的です。
耳垢を顕微鏡で見てみると特徴的な足の形をした成虫と、数が多ければ楕円形をした卵を見ることができます。
元気がよいとしっかり歩いている姿が見られることも
元気に歩いているミミヒゼンダニちゃん(^^)
*途中からドアップになります。虫が苦手な方はご注意ください。
後ろ足についている長い毛のようなものが特徴的です。
ミミヒゼンダニとマダニの違い
ミミヒゼンダニについては前述したとおりですが、「ダニ」と聞いてよくイメージされるのは皮膚に咬み付いて血を吸うマダニのほうかと思います。
ここでは「マダニ」と、ミミヒゼンダニとよく似た名前の「ヒゼンダニ」について違いを説明します。
マダニ
マダニは体長3-4mmほどある大きめのダニで、肉眼で見ることができます。
植物の葉っぱの植えなどで待ち伏せし、通りがかった動物に飛びついて吸血します。
血を吸って膨らむと1-2cmほどまで大きくなり、血豆のような見た目に…😫💦
マダニの怖いところは、吸血する際にいろんな病気を媒介するところです。
有名なものだと、
・バベシア症
・ライム病
・日本紅斑熱
・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
などがあり、特にSFTSは人獣共通感染症で死者も出ているため最近よくニュースになるなど危険視されています。
ヒゼンダニ
ミミヒゼンダニが「耳疥癬」と呼ばれることからもわかるかと思いますが、ヒゼンダニは「疥癬症」を引き起こすダニです。
「疥癬」と聞くとたぬきなどを想像される方も多いかもしれません。
が、とても感染力が強く、わんちゃんやねこちゃん、人間にもしっかり感染します…😅
ミミヒゼンダニは耳の皮膚表面に寄生しますが、ヒゼンダニは皮膚に小さなトンネルを掘って寄生します。
それにより炎症を起こし、ミミヒゼンダニ同様、非常に強いかゆみを引き起こします😣💦
顔や耳、腹部、胸部、肘や内股など皮膚の薄い部分に症状が出やすく、発疹とかきむしることによってかさぶたや引っかき傷が見られることが多いです。
ミミヒゼンダニがいると何が悪いの?
ミミヒゼンダニが寄生することで起こる大きな問題としては強いかゆみが一番に挙げられます。
頭を何度も振っていたり、しきりに耳をかく、耳を床にこすりつけるなどの症状が見られ、激しくかいたりこすったりすることで頭部の脱毛や引っかき傷が見られたり、外傷性の耳血腫を引き起こすことも…😢
耳垢は茶褐色〜黒色で少しカサカサした性状、大量に耳道にくっついていることが多く、塊でポロッと取れることもあります。
ちなみに、この特徴的な耳垢は滲出液や耳道の分泌液、ダニの排泄物が溜まったものなんだとか…
いやーーー💦
また、ミミヒゼンダニが寄生すると、耳が臭くなる、他の動物にも感染するなどの悪影響もあります。
ミミヒゼンダニに効果的な薬は?
主に使われている薬はレボリューション(犬・猫)、もしくはレボリューションプラス(猫のみ)という商品。
サロラネルとセラメクチンという成分が入っており、虫の神経に作用して殺滅する効果があります。
猫ちゃん用で最近出た商品だとブロードラインキャットコンボという商品があり、そちらはエサフォキソラネルという成分が効果を発揮します。
現在はレボリューションなどを首の後に塗布することが一般的ですが、以前はフロントライン(フィプロニル)を点耳するという方法もあったようです。
↓治療の流れは以下の通り↓
- 洗浄
- 耳ダニと卵を物理的に取り除く(炎症が強い場合出血してしまうことがあるので無理のない程度で)
- 点耳薬を効きやすくするため(感染が起きている場合は抗生剤や炎症を抑えるお薬を点耳することも)
- お薬塗布
- レボリューション(犬・猫)
- レボリューションプラス(猫)
- ネクスガードキャットコンボ(猫) など
- 1ヶ月後ぐらいに再度検査とお薬塗布
- 再度耳垢検査で耳ダニがいないかチェック
- 駆虫薬は卵には効かないため、3週間たって孵化したあとの耳ダニを殺滅するため再度お薬を塗布
まとめ
いかがだったでしょうか?
ミミヒゼンダニが寄生すると強い痒みを引き起こします。
それにより
・QOLの低下
・掻きむしりによる外傷 → 耳血腫や細菌感染
…なんてことも考えられます。
同居のわんちゃんやねこちゃんがいればその子達にもうつる危険性があります。
ミミヒゼンダニは勝手にいなくなってくれることはありません。
耳垢検査で見つかったり、それらしい症状が見られた場合にはしっかりと治療してあげましょう。
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